山奥の、寒々とした村でのお話。
「おじいさん、さみしいねぇ」
「ああ、子供がおれば、にぎやかで楽しかろうな」
そういって、野良の合い間に鍬を置いて一服するとき、どちらからともなくこんな話が出てしまうの。
そう、老夫婦には子がなかったのよ。
なんでかっていったら、子の作り方を知らなかったと言うのが正直なところですわ。
昔はけっこういたんじゃないのかな?本能だけでは子作りできない人間の性(さが)・・・

それでも、お婆さんは、けなげにも、村はずれの住吉(すみよし)の神様の祠(ほこら)に日参していたの。
なんでも、住吉の神様は子宝の神様と言うではないですか。

その昔、病弱の夫の仲哀(ちゅうあい)天皇代わりに神功(じんぐう)皇后が住吉の神様のご託宣で三韓(百済、新羅、高句麗)征伐に行ったときに、懐妊しておられ鎮懐石(ちんがいせき)を抱いて陣痛を抑えながら帰ってこられたが、とうとう筑紫で御子をお産みになったのよ。
※その御子こそは応神天皇だそうです。大阪に応神天皇陵という大きな前方後円墳があります。

そんな言われもあって、お婆さんは住吉様の祠に「子を授かりますように」と毎日拝んでおりました。
ある朝、お婆さんは下腹に痛みを感じ、尻の辺りから何かを産んだの。
股から、ぽろりと出てきたのは一寸に満たない小さな赤子でした。

「じ、じいさま」
悲痛な叫びに、となりで大イビキをかいて寝ていたじいさんが
「な、なんじゃぁ」
「じいさま、これ、赤ん坊が」
「うわっ。ちいこいあかんぼじゃ。どした?」
「産んだ」
「産んだぁ?だれが」
「わしが」
「あわ、あわ、あわわ」
じいさまは、歯のない口をあんぐり開けて、言葉にならない。
すると、小さな赤子はえらいおっきな声で元気よう泣き出した。
「おわ~ん」
「あらら、かわいいのぉ。そうじゃ、おっぱいがほしいんけ」
そう言って、しなびたお乳を出すおばあさん。
「あほ、そんなもんしがませて、でるかい」
「そやかて、どうします?じいさま」
「米のとぎ汁を飲ませよ。かゆがええかな」
そういって、へっつい(かまど)のとこへいく爺さんです。

きんの(昨日)のご飯に水を足して、かまどに火を入れておかゆを作ろうというのです。

「男の子じゃあ」
「ほんに、ちっさいのがついとる」
「おさむらいにしよか。坊さんにしよか」
「なんでもええ、元気に育ってくれたら」

そうして、老夫婦に大事に大事に育てられました。
名前は一寸(約3.3cm)法師(いっすんぼうし)とつけられましたよ。
あんまりにも小さく、いくら食べても一寸からぜんぜん大きくならんかったから。
「この子、なんで大きくならんのやろ?」
「わからん」
「なんか、物の怪のたぐいじゃないかの」
「そんなあほな」
それをこっそり聞いた一寸法師はいたたまれず、
「おれは、物の怪なんかじゃない。明日からおれは都に出て、大物になって帰ってくるから。そしたら、おじいもおばあも都に呼んで、いい暮らしをさせてやるから」
「たのもしや。一寸法師」
そう言って、老夫婦は精一杯の支度をさせて、都に旅立たせましたよ。
刀は、おばあさんが、お針仕事の木綿針に鍔(つば)と鞘(さや)をつけて作りました。
着物は、夜なべをして立派な狩衣(かりぎぬ)をこしらえました。
乗り物は汁椀の舟とお箸の櫂(かい)です。
※童謡のとおりやんけ・・・

家の前の小川は都に続いていました。
そこから、一寸法師はお椀の舟に乗って、おじいさんとおばあさんにお別れをいたしました。


鴨川から京の都に入った一寸法師は、立派なお屋敷の前に立ちました。
「よし、これから、寝食を忘れて働き、いつかは立派な侍になってみせる。頼もう!」
体に似合わず、大きな声です。

家人(けにん)が出てきてあたりを見回しますが・・・
「なんじゃ?いたずらかい。だあれもおらんがな」
「たのもう!」
「でも、声はするなぁ。どこじゃ?だれじゃ?」
「ここだぁ。こっちじゃぁ」家人の足元で声がしました。
「おわっ。なんと小さい男や?お前は?」
「わたしは一寸法師と申す。ここで下働きでもよいから使ってもらえぬか?」
「ここは宰相殿のお屋敷ぞ。宰相殿がそんな小さい男をお使いになるか、帰った、帰った」
※宰相殿は藤原氏のさる大臣ということでお願いします・・・

にべもなくつっぱねて、家人の男は屋敷に戻ってしまいました。そのとき
「あら」
「これは、これは因香(よるか)様」
鈴を転がすようなかわいらしい声が後ろからしたよ。
「どうしたの佐伯(さいき)?その子は、まあなんと小さいのでしょう」
「こやつは、屋敷に使ってくれとうるさいのです。追い返そうとしておったのです」と佐伯という家人が弁解した。
「よいではないか。あたしは気に入りましたよ。その子をあたしがめんどうみるわ」
「因香(よるか)様・・・、しかたない。おい、お前、この方は宰相様のお嬢様だ、失礼のないようにな」
※藤原因香(ふじわらのよるか)は贈太政大臣高藤(たかふじ、838~900年)の娘。母は尼敬信(あまきょうしん)。貞観十三年(871)、従五位下。元慶二年(878)、権掌侍。寛平九年(897)、従四位下掌侍。古今和歌集の脚注では「貞観寛平延喜典侍云々」と伝えられる女官です。あたしが好きなので登場願いました。

「ははっ。ありがたき幸せ。お嬢さま、わたくし、一寸法師と申します。なりは小さいですが、心意気は一人前でございます。どうかよろしくお願いいたします」
「ええ、こちらこそ。法師様」
その日から、お姫さまのお話し相手として、お供をつかまつることに相成りました。
家人たちも、あまりに小さい一寸法師のことですから、取るに足らないことだと、気に留めなくなりました。
つまり、お姫様の慰み者、ネコを飼っているのも同然というわけです。

しかし、ネコとは違って、一寸法師は学問もでき、聡明で利発でした。
お父上の宰相様も、一寸法師を高く評価し、娘の御側用人(おそばようにん)として重く用いました。

当然ですが一寸法師は、よるかと同衾します(一緒の布団で寝ることよ)。
よるかのふくよかな胸の間に抱かれて眠るのが法師の至福の時でした。
ある晩、よるかが寝返りをうって、一寸法師は裾のほうに投げ出されてしまいました。

法師は足元から布団の中にもぐりこんで、元の位置に戻ろうとしますけど、道をまちがえて、姫の着物の中へはいりこんでしまいます。(確信犯やろ)
あたたかい股(もも)を這い上がり、湿った草むらにたどりつきました。
「ああ、ここは」
今と違って当時の女性は下着らしきものは着けていません。
すぐに、陰裂に届いてしまいます。

一寸法師は裸になり、股に全身を割り込ませました。
体は一寸でも、あそこはオトナです(名探偵コナンかい)
「ああん」
甘やかな、年頃の娘の声が響きます。
全身を動かして、裂け目をこすります。
「あふっ。いや」
体中が、よるかの洪水で蒸し風呂に入っているようでした。
「うう。気持ちいい」
べちょべちょと音を立てて、一寸法師は、よるかの股ぐらで暴れます。
すると、法師の頭ぐらいのおさねが飛び出てきました。

どぼんと、深い穴に頭から飛び込みます。
まっくらですが、ここちよく、母の胎内にいるようでした。
手をかいて、穴の中を進みます。
息が苦しいけど、快感のほうが勝りました。
「うぎゅ~」
よるかの胎内が法師を絞り上げます。
すんでのところで、表に出た一寸法師。
「ぷはーっ」
「はぁ、はぁ」
よるかはおこりのように汗をかき、布団を蹴飛ばして、震えてました。
「ほ、法師、そなた、なにを・・・」
「よるか様があまりにもお美しいから、つい」
「もうだめじゃ。死ぬる。死んでしまう」
よるかはそう言って、ぬめぬめと光る素っ裸の法師をつまみ、いとおしそうにだきよせました。
「また、やっておくれな。一寸法師様・・・」
妖艶と評したらよいのでしょうか、いつもの幼さを含んだ表情とはまったく違うよるかでした。

それからというもの毎晩、月のものの時以外はご奉仕させられました。

そのころ、京の都には鬼が出るといううわさが立ちました。
なんでも、年頃の娘ばかりをさらっていくというのです。
うわさは宰相殿の耳にも入り、屋敷を警戒させておりましたが、よるかが節句だとかでお参りに行くことになり、一寸法師をお供にして侍女と二人で道行くこととなりました。

少し薄暗いやぶの道で、青い風貌の鬼が出没しました。
「おい、娘、待てぃ」
「・・・」
「こっちへ来い」
荒れ寺のほうに鬼がよるかの手をつかんで引っ張っていこうとします。
侍女も恐いのか無言で付いていきます。
法師はよるかの袂にひそんで、様子をうかがっております。
「だいじょうぶ。よるか様、わたしがうまくやりますから、そのまま、そのまま」よるかの耳元に上がってきて法師がつぶやきます。

荒れ寺の本堂と思わしきところの床に、よるかと侍女がころがされました。
鬼はほかにも赤いのがいましたよ。
「おお、生娘か。こっちはすこしトウがたっとるな」
「赤助、どっちからいただく?」
「年増で味見じゃ。青助」
鹿皮の腰巻の間から、巨大な棒が首をもたげています。
「ほら、舐めい」
侍女は震えています。とても口に入る大きさではない。しかたなく、小さな舌でぺろぺろと舐めました。
「ひゃあ、こそばゆい。こそばゆいわ。ほれ、もっと口をあけよ」
無理に、筒先を押し込もうとしましたが口が裂けそうになり、泣き泣き後ろに倒れました。
「やっぱり、あかんか。ほなら下や」
侍女は着物をまくりあげられ、蛙(かわず)のような白い腹が丸出しになります。
「ここもちっさいな。どれ」と侍女の足を開き腰を割り込ませ、ぬらぬらと赤光りする一物を押し込みました。
「うぎゃあ」
断末魔の叫びとはこのことでしょうか。身が引き裂かれそうになる侍女は股から血を流して悶絶してしまいましたよ。

もう我慢なりません。一寸法師はよるかの袂から躍り出て、
「やあ、やあ、我こそは藤原宰相の侍従の者、一寸法師なるぞ。いざ尋常に勝負、勝負!」
「な、なんじゃ、この虫けらみたいなのは?」
そう言っているあいだに、バッタのごとく、法師は赤鬼の体を這い上がり、にぶい鬼の動きに乗じて、頭まで登りつめました。
「うわ、うわ、おい青公、こやつをつぶしてくれ」
「ガッテン、うりゃ」赤鬼の頭をしたたか、こぶしでどつく青鬼。
「痛い、痛いがな」
「この!」
「ほら、ほら、鬼さんこちらっと」
一寸法師はちょこまかと青鬼のしばきをさけながら、赤鬼の上で踊ります。
でも油断したか、赤鬼の手のひらのつかまってしまいました。
「万事休す・・・」
「ほら、どうした、ちび公。こうしてくれる」
と、一息に赤鬼は一寸法師を口に入れ、飲み込んでしまいました。
「きゃあ」
悲鳴を上げる、因香・・・。いとしい法師は死んでしまった・・・

しかし、赤鬼の表情がおかしい。
「う、うへっ。痛い、痛たたたっ」
腹を押さえて転げまわる赤鬼。
「赤助、どうした。おい」
青くなって(?)青助が赤助を介抱しようとしますが、すごい力で青助を跳ね飛ばし、泡を吹きながら白目を剥いて転げています。
青鬼は、仏壇のカドで角を折り、気絶してしまいました。
「ま、まいった。やめてくれ。もう勘弁」
赤鬼がそういうと、痛みも治まり、おくびを一つだすと一寸法師が赤鬼の口から這い出してきました。

「もう、しないか?赤鬼」
「も、もういたしません。一寸法師様」
一寸法師は、赤鬼の腹の中で、針の刀でつつきまくり、大暴れしていたのです。
「おわびのしるしに、この打出の小槌をお持ちください。これは欲しいものを念じて打ち振りますと、そのものが出てきたり、思い通りになる不思議な小槌です。どうぞ」
一寸法師には大きすぎて持てないので、因香がかわりにいただきました。
鬼は気絶している侍女に活を入れて、起こし、三人を帰してくれました。

鬼たちも山に引き上げ、その後、悪さをすることはありませんでした。

家に戻って、よるかは法師に
「ありがとう、法師様。この小槌で願いをかなえましょう」
「わたしは、よるか様と一緒にいられるなら、なにも望みません。よるか様のお望みをおっしゃってお振りください」
「じゃあ、法師様、そこに立ってくださいな」
「え?わたしが?」
要領を得ない顔で因香の言うとおりにしました。
「法師様の背が大きくなりますように・・・」
そう言って、因香は小槌を打ち振ります。するとどうでしょう。
一寸法師の背がぐんぐん大きく伸びて、りっぱな青年になったではないですか。
「まあ、素敵。法師様」
「ああ、なんということだ。因香様」
「これで、お父様にお許しをいただける・・」
「お許し?」と法師
「そう、法師様と夫婦(めおと)になるお許し・・」

それからというもの、宰相殿は大喜びで、「実は、わしも法師殿が因香の婿殿になってくれればと思っておったのよ。でもあの背丈じゃ、無理じゃなとあきらめとったのだ。こりゃめでたい」
「お父様、ありがとうございます」と因香
「ありがたき幸せ」と法師

その夜、二人は、契りあった。
今度は、ちゃんと大人の契りを。
「よるか様、打ち出の小槌で、もう少し、ここを大きくしましょうか?」
「いいえ。いまの法師様のが一番わたしに合ってるから・・・」
ほほを赤らめて、因香は言いました。

めでたしめでたし。