アリセプト(ドネペジル)のシートが散らばっていた。

破いたところが二箇所あった。

認知症の進んだ義父をデイに送り出して、やっと一息ついたところだった。
「おとうさん、自分で飲んだのかしら?」
もしそうだとしたら、ぜんぜんわからずに飲んでいることになる。

あたしは、一人になったのをいいことに、ケータイを取り出して出会い系サイトにアクセスした。
もう、がまんならない。
男に抱かれたい。
誰でもいい。

あたしだってまだ四十路(よそじ)よ。
子供のいないあたしは、仕事で忙しい夫の昭雄(あきお)にまったく、これっぽっちも可愛がってもらえていない。
「もう、だめなのかな・・・あたし」
そりゃあ、すこしぽっちゃりだけど。
おっぱいもそこそこ大きいし、顔だって鈴木砂羽に似てるし。

・・・三十のニートで~す。ヒマしてます。遊びませんかぁ?
掲示板には、おさびし男たちが、網を張っている。
「こいつ、どうだぁ?」
・・・おれ、結婚してますけど、レスです。舐めたいです云々・・
「こころゆくまで舐めてもらいたいなぁ。よし、このオトコにしよ」

メールしたらすぐに返事が返ってきた。
「条件教えてください」
お金くれるっていうんだな。
ま、割り切っておいたほうがあとくされがないからね。
「別イチでどう?」
「決まりです。どこへお迎えにいきましょか?」
「ローソン花ケ丘店はどう?」
「オッケーです、じゃあ十時に、トヨタのグレーのヴィッツで行きます」

それからはいつものようにとんとん拍子だった。
どんなヤツがくるのか楽しみだった。
プロフによれば、年のころは三十半ばというから、年下だった。

件(くだん)のローソンへ行くと、もう来てるじゃない。
グレーのヴィッツ。
車はその一台しかなかった。
あたしは、そのまま近寄って、助手席側のドアをノックした。
「どぞ」
三十半ばはウソやろ。どうみても同い年・・
「おじゃましまぁす」
タバコのにおいはなかった。
ちらっ、ちらっとあたしを見る視線を感じながら席に座った。
「すぐ行きます?」
「ええ。おまかせするわ」
「じゃ」
エンジンがかかって、前の道路に進み出た。

「あっちゃん(ハンドル)って呼んでいいっすか?」
「いいよぅ。じゃ、あなたはナツさんでいいのかな」
「まあ」
「なんでナツなの?」
「夏生まれだから」
「名前じゃないんだ」
「うん」

「この先のホテル街でいいっすか?」
「いいよ」
だいたい、みなここに来るんだから。
ボッカチオ三号館というこの辺では普通クラスのホテルに車が入っていく。
「来たことあります?」
「一、二度」
「けっこう遊んでんですね」
「そんなことないよ。ふつうだよ」
そんなことを言いながら車から降り、ほの暗いエントランスに向かった。
ナツ君は、あたしの肩をさりげなく抱いて、自動ドアにいざなう。
中は、トロピカルなフレーバーで満たされていて、ちょっとぶっ飛んだ雰囲気だった。
サンバがBGMになっているからなおさらだった。
「ここ、お風呂が広いんですよ」
「そうだっけ」
ランプの点いた部屋のボタンを押し、装置から吐き出された紙を取る彼。

そのままエレベータに乗り、五階で降りた。
端の部屋のようだった。
「どぞ」
彼が先に通してくれる。
やさしいんだ・・・

自動支払機が飛び出たせまい玄関である。
奥はその反対に広々としていた。
4,750円ならこんなところだろうか。

お風呂の用意をして、ベッドサイドに二人して腰掛けた。
彼のほうからそう仕向けるのが自然で、わりと、慣れているような感じ。
「先に渡しておこうか?」
めずらしい男性だった。
「いいの?逃げちゃうよ」
と、あたしはおどけた。
「逃げられないって」
そう、自動ロックなのだった。
彼はピン札の一万円をあたしの前に差し出した。
「よろしくね」
「ありがとう」
あたしは、押し戴いて、ポーチのウォレットにお札をしまった。

そしてすぐにベッドに押し倒された。
まるで、お金を受け取ったことが合図のように。
激しく唇を奪われ、口の中を舌でこねまわされた。
かすかにタバコの香りがしたが、嫌なほどではない。
お乳はつよく服の上からまさぐられ、さまよっていた。
どこから手を入れようかと・・・
あたしは、ブラウスのボタンを外し、手を入れやすいように助けた。
「あたし、太ってるでしょ」
「少しね。でもおれは好きだな」
はむ・・・
あらわにされた大きめのお乳が彼にかぶりつかれた。
舌で乳首をれろれろといじめられる。
「はあん・・・」
乳首は充血してまるまると大きくなっていた。
左右を均等に舐めるナツ君は、ほんとうに舐めるのが好きなようだった。
首筋も、脇の下もみんな舐められるところは全部舐めてくれる。
「大きいおっぱいだね」
「そう?後ではさんであげよっか」
パイずりのことである。
「うん、ぜひ」
よろこんだナツ君の顔が印象的だった。
さっき車の中で見たより、今のほうが歳相応に見えた。

パンツ越しに、谷間もいじられる。
濡れるとパンツが汚れるので、脱ぎたかったが、しかたがなかった。一応、替えを持ってきているし。
クリあたりを探って股布の上から押される。
「あひ」
「いいの?」
「いい」
「ほら、クリちゃんがボッキして」
「いやん。言わないで」
あたしのクリは少し出ていて、大きく見えるのだった。
こりこりといじられると、もうだめだった。
「うああ、パンツに染みが」
「もう・・・」
「お風呂に行こうか」
彼のほうから言ってくれた。
ほんと、そうしたかったから助かった。

シャワーで、先に洗わせてもらった。
後から彼が入って来る。
色白だけれど、なかなか締まった体で、ペニスが特徴的に曲がっていた。
亀頭というのかしら、そのでっぱりがマツタケを連想させる。
たぶん、大きいほうだと思った。
目の錯覚でそう見えるのかもしれないけど。

あたしたちは、湯船で向かい合った。
広めの浴槽は二人には十分だった。
お湯の中で彼は、あたしの谷間をいじってくる。
ぬるぬるした感触がお湯の中なのにわかって恥ずかしい。
おなかの肉が段を作って、その部分はよく見えないのだった。
「つながろうか」
「ここで?」
「うん」
あたしは腰を浮かして、彼の曲がったモノを穴に導いた。
なかなか入れにくかった。
頭が大きいからかもしれない。
角度が微妙に合わないのだ。
彼が手を貸してくれた。
ぐわっと押し広げられる感覚があり、そのまま一気に突き通された。
あたしの口は大きく開き、喉が鳴った。
「ぐあ」
「どう?入ったろ?」
「は、入った」
抜き差しならない状況で、あたしはしっかりはめ込まれている。

それにしても硬いペニスだった。
こぶしをつっこまれているような感じだった。

あたしのなかは徐々にゆるみ、彼を包み込んでいった。

差し込まれたまま、あたしたちは、口を吸ったり、毛を噛んだり、耳に舌先をつっこまれたりした。
いい加減のぼせてきたので、それでおしまいにした。
ずるりとペニスがあたしから引き抜かれるときに鳥肌が立った。

濡れた体をバスタオルで拭き、エアコンの効いたベッドルームであたしたちは、くつろいでいた。
彼の勃起は見事で、今までに見た誰よりも角度が鋭かった。

「舐めてあげるよあっちゃん」
おもむろにナツ君が言う。
「はずかしいな」
「ほら、足を広げて」
あたしの足の間にナツ君は顔をうずめて、繊細な技を披露した。
小さな振動でクリを攻め、会陰からアヌスを舐めとり、その口撃は腿にまで及んだ。
陰唇が丁寧に舌で展開させられた。
最後に、膣に舌が挿入される。
「あうん・・いや、いや」
「気持ちいい?」
「だめ、変になっちゃう」
「なっちゃいなよ」
べちょ、べちょ、にちょ・・・
そして、またクリが標的にされる。
「ひゃあ・・・」
クリは完全に剥かれ、最大限に露出させられた。
唇の先でつまむように、クリがひっぱられる。
「きゃっ。いっちゃう」
もう、逝ってしまう。あの感覚・・・
腿が引きつるような。
腰が持ち上がるような。

どれくらい経っただろう?
あたしは気絶してしまったようだった。
シーツが漏らしたように湿っている。
「すごいね、潮を吹いたよ、あっちゃん」
「うそ」
あたしはよろよろと起き上がった。
お布団が大変なことになっていた。

まだ挿入もされていないのに、あたしは自分を失ってしまったらしい。