ネコの「なーお」は、いったい何歳なのかわかりません。
いつ生まれたのか?
昔からずっとこの街にいるのですから、だれもそんなことを気にしません。

「なーお」が、ノコノコと日なたを探して、歩いていると、ネコ仲間の「はちわれ」とか「まろ」とか「どべ」たちがあいさつしてきます。

「はちわれ」は顔が白いんですが、あたまが黒くって、おでこのど真ん中で割れてるように見えるから人間たちが「はちわれ」って呼びます。
「はちわれ」のご主人はピアノの先生です。
よく先生の邪魔をして、ピアノに乗るもんですから、叱られて庭に放り出されるんです。

「まろ」も顔が真っ白なのに、目の上に黒い丸が眉毛のように見えます
「お公家(くげ)さん」という種類の男の人は、眉毛(まゆげ)をそり落として顔におしろいを塗りたくって、墨で眉毛を書き、自分のことを「まろ」と言うんだそうです。
そうそう、女の子のお節句に飾る「おだいりさま」みたいなのを「お公家」って言うの。

「まろ」には決まったご主人がいません。
でもノラではないんですよ。
テンリ教の教会に出入りしています。
でもお勤めが始まって、太鼓やスズが鳴り出すと「まろ」はうるさいので外に出てくるんです。
「たあすけたまえ~てんりんきょお~どんどんしゃんしゃん」
始まりました・・・

「どべ」はタバコ屋のネコで、白猫なのに、鼻の横に黒い斑(ぶち)が、それこそあんこをぬりつけたようにくっついているから、そう呼ばれてるの。
あんまりよね。

じゃあ、「なーお」はなんで「なーお」なの?
それはね鳴き声からと、飼い主が「尚子(なおこ)」っていう名前なので、その尚子さんがいつも「なーおちゃん、ごはんよ」って呼んでるうちに「なーお」になっちゃったってわけ。
ネコの名前なんてそんなもんよ。

でもね、「なーお」には誰も知らない秘密があります。
「なーお」は、ネコの姿をしていますが、実は、人間たちが「宇宙人」とか「地球外生物」とかうわさしている、そういったものなんです。
脳を調べればすぐわかることなんですけど、そんなことを疑う人はいませんから、誰も知らないのです。
「はちわれ」は「なーお」が、ときどき難しいことを言うので変なやつだとは思っているみたいですけれど、しょせん、ネコなので、それ以上の追及はできないのです。

「なーお」のような生物(?)は、昔からこの星にたくさん入り込んでいるんですよ。

「どべ」が「なーお」に、
「なーおよぅ、寒いべ」
「んだな、寒いべな」
「なーお」は長いしっぽを、そろえた前足に巻きつけて、猫背で応えました。
ここ二、三日で急に寒くなり、木々も紅葉して、山は錦を着飾っています。
「どべ」はあくびをひとつして、寒そうに毛をふくらませて丸まりました。
もう息が白くなっています。

「なーお」の体は地球のネコものですから、やはり、どっから見てもネコなんです。
地球のネコの脳みそは、ほとんどが使われておらず、ただ動くものを追いかけ、昼寝をし、ごろごろ喉を鳴らすだけにしか脳を使っていないんです。

地球の天文学者が「ラランド21185」と呼んでいる惑星系からやってきた「存在」が、ネコの脳を活性化し、ほぼ100パーセントの脳細胞を使うことで、地球人なみの知能を備えさせてから乗り移ったのです。
知能の高い地球人に乗り移ってもよかったのですが、たまたま最初に出くわしたのが「ネコ」だったために「なーお」が乗り移られてしまったんです。
このような「失敗(?)」はようあることなんです。
一度乗り移ると、やり直しがきかない、大変な冒険なんですよ。
でも、ネコなら地球人に近づきやすく、深く地球人の生活に密着できるので、地球を調査するには格好の生き物だと「彼ら」は気づきました。
そして地球人の心を支配するにもネコやイヌは好都合だったのです。
ネコカフェでそれは十二分に体験できました。

困ったことは、頭脳が明晰でも体がネコなんで、能力が発揮できないわけです。
だから、日なたを探して、寝るしかないの。

「なーお」は公園のベンチに飛び乗って、おひさまの光をあびました。
「この星の恒星は、一つなんだなぁ。それがちょうどいいんだなぁ」
「地球は住みよい星だ・・・うとうと」
尚子さんもやさしいし・・・「なーお」は、ふるさとにはもうこの体なので帰ることはできませんが満足でした。

ただ、この星の「ほけんじょ」は恐ろしいところです。
「ネコ取り」につかまると「ほけんじょ」で殺されてしまうんですから。

あなたのそばにも「なーお」のような異星人がいますよ。きっと。
ほら、あなたをじっと見てませんか?