温泉旅行に行くというので、髪をセットしに行ってきた。
お友達の加川里美さんに誘われたのだ。
加川さんは、なんとか会に属する大病院のベテラン看護師さんで毎年、春にお休みをたくさん取るので、旅行に誘ってくださるのだ。
あたしたちは、五十半ばで年齢も近く、話も合うのでよくお買い物や、食事をともにした。
お互い子供がいないのも共通していて、子供の話が出ないのは、長くいい関係を続けられる秘訣かもしれない。

「高安さん、こんどの金・土で百合根温泉に行かない?」
里美さんと駅前の喫茶店「さおり」でお茶をしているときに言った。
「急ね・・・ちょっと待って」
あたしは手帳を取り出して予定を確かめる。
パートタイムでレンタルビデオ店で働いているため、不規則な勤務時間になっているのだ。
「あ、金曜の午後からなら空いてるわ。土日はいつも家にいるし」
「じゃ、決まりね」

旦那は、あたしがどこに出かけようが無頓着だった。
ビルメンテナンス会社に再就職して五年が経ち、それなりに忙しくやってくれている。
前は化粧品会社の営業マンだったのだけれど、なにが気に入らなかったのか「辞める」と一言、言って本当に辞めてきてしまったのには閉口した。
理由を聞いても決して言わなかった。
ただ、その頃から、夫婦の営みに溝ができた。
夫のアレが勃たないのだ。
EDとか、言ったっけ。
あたしも、更年期を迎えたころだったので、淡白にはなっていた。
それでも求められれば、嫌な気はせず、睦み合った。
子供がいないから、存分に交わることができた。
しかし、挿入のない愛撫だけの交わりだった。
あたしはそれでも構やしなかった。
旦那は、日増しに自信をなくし、何事も消極的になっていくのが、見ていて気の毒だった。

久しぶりに、髪をカットし少し染めてみた。
十は若くなったと思うが・・・
風呂あがりに、髪を乾かし、鏡の前の自分を見て、ちょっといい気になっていた。
鏡の中に旦那が映った。
「あら、あなた」
「秀子、きれいだ」
「よしてくださいよ。今さら」
彼は、すっとあたしの後ろに立ち、肩を抱いてくれた。
「あなたってば・・・」
いきなり、首をねじ曲げられるようにして、あたしは口唇を奪われた。
あむ・・・
腰に硬いものが当たる。
あたしで、勃ってくれてる・・・
単純に嬉しくなった。
こんなこと、かつてなかったから。
「あなた、今日、する?」
あたしはいたずらっぽく、訊いてみた。
「ああ、しよう。できそうだ」
「そうみたいね」
あたしは、パジャマ越しの勃起に触れながら、笑った。

寝室に、ふたりして向かった。
明かりを落として、ベッドに倒れ込む。
十年以上も使っているダブルベッドがきしんだ。
「はぁ、あなた・・・」
「秀子ぉ!」
シャツの上から、ゆるんだ乳房がもみしだかれ、その間も硬い彼が腿を突く。
こんなに感じてくれているなんて、髪型一つで変わるものだと感心していた。
あたしは、幸い、肥えていなかった。
若い頃からの体型が、維持できていて、着るものもまったく変わらず、古いものを着まわしている。
ダイエットなどとは無縁の生活をしてきている。
反対に、旦那は、いささか太り気味である。
もう、四十を過ぎた頃には太り始めていた。
ただ、新しい職場になって、仕事がキツイのか、少しスマートになったように見える。
営業マンのころは、食事も不規則で、酒も過ぎていたから、今のほうが健康的になっているのだ。
「あん・・・」
パンティが取り去られ、そこに彼の顔が密着する。
舌が谷筋を這う。
陰唇が、彼の厚い口唇でつままれ、引っ張られる。
「いや・・そこ」
「濡れているぜ」
「言わないで・・」
ぺちゃ、ぺちゃ・・・
ことさら音を立てて舐め回される。
舌のざらつきが、内ももで感じる。
「おれも舐めてくれよ」
彼は、膝立ちでベッドの上を移動してあたしに、勃起を突きだした。
「しょうがないわね。でもすごい・・・」
「だろ?こんなになってるんだ。ひさしぶりだ」
「どうしちゃったの・・・あむ」
「わからん。お前のその姿が原因だろう」
「はむ・・ほうなの?」
硬い旦那を含みながら、上目遣いに返事をする。
本当に、若い頃に戻ったようだった。
亀頭の裏筋を舌先でつつき、舐め上げた。
深く頬張り、えずきそうになるまで含む。
「ああん、早く入れて欲しいわ」
「そうか、じゃあ、入れてやる」
あたしは、喜んで、ベッドに横たわった。
彼があたしの足をあげて、割り込んでくる。
二三度、陰門を先端でこすると、ずぶりと挿しこんできた。
久しぶりで、すこし痛みが走る。
「ひゃあ・・・」
「どうだ?痛いか?」
「ちょっとね。でもいい」
「ああ、よく締まるな。お前のは」
「そうかしら」
「おっぱいも、やわらかいし」
そう言って、覆いかぶさって来、乳頭を含まれる。
ちゅばっ、ちゅば・・・
激しく吸われて、痛くなった。
乳房にキスマークが刻印される。
「うおお、締まる、締まる」
あたしもぎゅっと、膣に力が入るのがわかった。
硬い柱にからみつく、あたしの肉鞘(さや)・・・
確かに、彼を絞っている。
それに応えるかのように、旦那はピストン運動を激しくしてきた。
ギッシギッシとベッドも音を奏でる。
屈曲位で、より深く彼が到達するのがわかる。
もう、お腹いっぱいである。
男性がこんなに硬いものだと、久しく忘れてしまっていた。
「ああ、ああ、逝く、逝く」
思わず、あたしは登り詰めそうになりそんな言葉を口走っていた。
「いいか?秀子、秀子ぉ」
「あなた、いいわ。来て、来てぇ」
「ああ、出してやる。出してやるとも」
腰が潰れそうになるほど打ち込まれ、奥深いところで彼が弾けた。
びゅっ・・・
何年も、射精を受けたことがない子宮に、忘れかけていた圧力を感じた。
「あふぅ・・・秀子・・・」
彼は、やさしく口を吸ってきた。
あたしも応える。
なむ・・・あむ・・
長い舌があたしをかき回した。
まだ、彼はあたしの中に残っている。
それは次第に、力を失っていくようだった。
ぽろり・・・
彼が落ちた。
「はぁ」
「ああ、すごく良かったよ」
「あたしも」

うれしくなるくらい、彼はあたしの中に放ってくれていた。
トイレで拭いても、拭いても白濁液はにじみ出てくるのだった。