用を足しながら、胎内から精液が流れ出てくるのを見て「背徳」という言葉が浮かんだわ。

夫の知らない男性の精液…

五十代半ばになって、初めて夫を裏切ったの。

利用者様のご家族と不倫をしてしまったあたしは、ケアマネジャーとして失格だわ。

田口正和さんと言うの。

彼は、奥様が高次脳機能障害で寝たきりで、お子様もおらず、介護に疲れて寂しい思いをされていた。

ケアマネとして訪問を重ね、歳が近いこともあって、あたしたちは気が合った。

合ったといっても、あたしは肉の関係になってしまうとは思いもしなかったの。

正和さんから誘われた。

断るべきだったのに、あたしも心に隙間があったのね。

夫からはされたことのない、肉欲の愛され方…

恥じらいもどこへやら、あたしは未知の世界に誘われ、欲望に溺れることになってしまった。

女を忘れていたあたしは、目覚めたの。

子作りではない、男女の慈しみ。

正和さんの、たくましい体、妊娠の恐れはないのに、ほとばしる精を注ぎ込まれ、一抹の恐怖を抱いたわ。

あたしのような、魅力の無い「年増」に、どうしてそこまで入れ込んでくれるのか?

正和さんは、あたしを抱き、愛の言葉さえささやいてくれるの。

うそでも構わない。

そうされていたい。

夫には、ほんとうに申し訳ないけれど、あたし、逃れられないの。

正和さん!

捨てないでね。

ずっと、秘密のままで、あたしを抱いてほしい。

もはや老いていくだけの、醜いあたしを、捨てないでください。