もうすぐ夏休みだ。
中間考査の成績が予想を上回ったので、あたしは上機嫌だった。
お祖父ちゃんの前栽に生えている松の木に、144MHzの8分の5波長二段GP(アマチュア無線のアンテナ)を取り付けるために登っていた。
「なおぼ~ん」
従弟のこうちゃんが下から呼ぶ。
「こうちゃ、この同軸を投げるから受けてや」
「ほ~い」
あたしは同軸ケーブルの束を放(ほ)った。

井上電機のIC-202(トランシーバー)を肩にぶら下げて登っているので、木の上でテストをする。
通過型のSWRメータも持ってきていた。
こんなものを持って木登りするのは、中二女子にとって至難の業だった。

洋館の応接間に無事同軸を引き込んだあたしは、リグ(無線機)とアンテナをつないだ。
「なおぼん、できた?」
「うん」
こうちゃんはあたしの背後にぴったりくっついてリグに見入っている。
この子は最近、あたしにべたべたしてくる。
一つ下で甘えん坊で、かわいいんだけど。
「なおぼんっていい匂いがするね」だって。
「なに言ってんの。もう」
あたしの汗をかいた髪の毛に鼻を突っ込んで、くんくんするのだ。
「なあ、この無線って、世界の人と話できんの?」
「これは無理。せいぜい四国くらいまで」
「ふうん」
こうちゃんは、男の子のくせにあまり無線には興味ないらしい。
それよりも植物とか小動物が好きで、スズムシなんかを孵化させたりしている。
アリの巣の観察器具なんか、お祖父ちゃんから、あたしとこうちゃんにプレゼントしてもらったけれど、三日坊主のあたしはすぐに飽きちゃって、こうちゃんが最後までやりとげた。

むぎゅ
とつぜん、こうちゃんにうしろから抱き付かれておっぱいをつかまれた。
「いたいっ」
「えへっ。交尾」
そういうと、こうちゃんはスカート越しに体を押し付けてくる。
硬いのがつんつん当たるのがわかる。
「ちょ、ちょっと、こうちゃんって」
あたしも「交尾」がどんなものかくらい知っているし、セックスのことを彼が言っているのもわかる。
いつごろからか、あたしたちは、セックスの真似事を、大人に隠れてしていた。
挿入はまだだったけれど、こうちゃんの初めての射精も見せてもらった。
「したいの?」
「うん」
はぁ、はぁと息を荒くしているこうちゃんを見ているとあたしも変な気になる。
「わかった。納屋に行こう」
あたしたちはいつもの秘密の場所に向かった。
納屋と無理につなげられた、お大師さんの仏壇がある六畳ほどの部屋で、お祖父ちゃんが病院を出たり入ったりするようになってから、誰も参らなくなって久しい。
古い布団などが積んである薄暗い部屋だ。

こうちゃんは先に布団の上に座ってズボンを脱ぎだす。
ぴょこんとおっきくなったおちんちんを見せた。
「さわって」
いつもこうだ。
あたしは手を伸ばして勃起を握る。
先が剥けて赤みのある桃色の肉が見えている。
まばらな生えかけの陰毛に飾られたフランクフルトソーセージを思わせるそれは、どこかユーモラスだった。
「あったかいね」
「上下にこすって」
「こう?」
にゅちゃにゅちゃ…
尿道から透明な液体が、たらたらにじみ出てくるので皮との摩擦でいやらしい音がする。
あたしは対面でこすっていると、ぶっかけられる可能性があるので、こうちゃんの横に座り直して、こすりつづけた。
こうちゃんの顔が上を向いて目をつむり、頬に赤みがさして、射精が近そうな表情になった。
ううう…
こうちゃんの両足がぴぃんと伸びて、肩に力が入り、
「いぐっ」
そう言うや否や、ソーセージの先端から白い塊が噴き出し、古い畳の上にはじけた。
あたしの手の甲にもだらだらとあったかい液体がまとわりつく。
「あ~あ」
あたしは、スカートのポケットからハンカチを出して拭いてやった。
お姉さんっぽく、彼を立たせて、
「ほら、ちゃんと拭いとかんと、臭くなるよ」
「うん」
おとなしく、されるがままに拭かれているこうちゃん。
あたしだって切なくなって、濡れちゃってんだけど、こうちゃんはもうすっきりした顔で、外に遊びに行こうとする。
さわってくれとも言えないし、あたしもあきらめた。

そして洋館に戻って、無線機の調整を再開した。
こうちゃんはもうついてこなかった。
現金なヤツ…
ポケットにはたっぷりこうちゃんの精液をしゅませたハンカチが入っている。
自分で洗うしかない。