MMK(モテてモテてこまる)の則子(のりこ)さんとお酒を飲む機会があった。
そしてやっぱり、アノことに話題がいってしまう。
「やっぱり、迫られるのよね」
「サークルでも?」
彼女は市の生涯教育プランのひとつ「川柳教室」に通っているそうだ。
そこでは四十七歳の則子さんは、一番若いらしく、男性会員さんにも人気なのだそうだ。
男性会員は定年を迎えたひとばっかりで、上は八十代、下は六十二、三ってとこか。
MMKの威力はそういった枯れかけの男性にも及び、サークルの忘年会が今年もあるらしいけれど、また誘われたらやっかいだと彼女はゆううつになっている。
「断(ことわ)りゃいいのよ」「そう思うんだけど、お酒はいっちゃうとね」「だめねぇ」
私も、則子さんの優柔不断さには、なすすべもない。
さすがに最近はホテルまでお付き合いするということはなくなったそうだ。
旦那さんに「不貞」がバレるのをおそれてのことだった。
そういえば、昔、四十を超えたくらいの頃の彼女が、職場(上下水道の施工会社の事務員をやっていた)の男性と、そういう仲になってしまったといって後悔していたっけ。

MMKの女性は、じっとしていても男に言い寄られる。
そういったフェロモンがあふれ出しているのかもしれない。
雄犬にまで追いかけられてほとほと困ったとこぼしていた。
実際、その犬は中型犬で、しゃがんだ則子さんに馬乗りになって腰を振り、公道で真っ赤なペニスから滝のような精液をぶっかけられたのだった。
飼い主の奥さんが平謝りで、物見高い中学生の集団にまで笑われ、大変な騒ぎになったとか。

そんで、川柳サークルのことである。
男性会員の中でも若い方の、Fさんという紳士と飲み会で隣り合わせになり、最初はよそよそしかったのが、お酒が進むにつれ、饒舌になり、くだけた話題になっていったという。
「則子さんは、旦那さんは?」
「いますよ。子供もふたりいますし」
「おいくつのお子さん?」
「上の女の子が中二、下の男の子が小学校五年生ですわ」
しばらく、あって。
「旦那さんは、かわいがってくれますか?」
「はぁ?」
「夜、一緒に寝てます?」
「あの…今は別々ですけど」
「さびしいでしょう?さびしくないですか?」
「いや、べつに、この歳ですから」
「まだ若いじゃないですか。ぴちぴちだ」
則子さんはどう受け答えしていいか、困惑気味だったようだ。
そしてそのときにFさんは則子さんの手を取ってさすっていたという。
則子さんも、払いのけたりしなかったそうで…
「だめよ、そんなだから、あなた、男に言い寄られるのよ。ガードが甘いのよ」
私は、毎度のことながら、そうたしなめた。
「でもね、なおぼん、その人、奥さんに先立たれて、寂しいんだと思うの」
「そんな男、五万とおるがね。ほんなら、なに、あんた、ボランティアで相手してやるっての?」
私も酒のせいでからんでしまった。
「切ないのが伝わるのよ」
しみじみと日本酒を手酌しながら則子さんはつぶやいた。
「で、やってあげたの?」
「ううん。ホテルにはいかなかったけれど、公園のベンチで二人で座って、手でしてあげた」
「ありゃま」
「男の人って、出しちゃえばケロッとしているものなのよ」
「そりゃまぁそうだけど。良心が痛まない?旦那の顏がうかぶとか」
「体を開いたわけじゃないから…手だけなら、いいかなと思って」
「あきれた…ま、おひとつ」
私はお銚子を持ち上げて、彼女の空いた猪口に注ぐ。
しばらくして、語りだした内容は、およそ次のようだった。

二次会にも行かず、気分が乗らないとか言ったらFさんが送るよと背中に手を回してきた。
「家は、こっち?」
「ええ」
「冷えるね、今日は」
「そうですね」
「そこの公園で酔いを醒まそうか?」
「え?」
「さ、こっち」
Fさんは下心丸出しになって、積極的だった。
私を送ると言ったのも、迫ろうという気持ちからだったのに相違ない。
いままでのほかの男性とまったく同じ行動をFさんもとったわけだ。
私は押されるまま、夜の公園に足を踏み入れていった。
ここは運動公園であり、児童公園のようなあけっぴろげなところではなく、あちこちに暗いベンチが点在している。
街灯はまばらであり、闇の方がほとんどを占めて、人影など皆無だった。
あづま屋のような休憩所があり、前には池が広がっているはずだが、全く見えない。
私たちは無言でその中に入っていった。
もはや、言い訳ができない状況だった。
「座ろう」
「…」
「ね、規子さん、ぼくは、最初から君が好きだった」
そう、ずけずけと言うのだ。普段ならそんなことを言うような人ではないのに。
「あたし、主人もいますし、これはいけないことだわ」
一応、しっかりとお断りしておくべきと、私はそう言ったと思う。
「いや、体が欲しいというのではない、少し手伝ってほしいだけなんだ」
切に懇願するという感じでFさんが言う。
「あたしにどうしろと?」
「手を借りたい」
「手?ですか?」
「少し触ってほしいんだよ。わかるだろ?」
やや、強引な物言いになり、私に有無を言わせない雰囲気だった。
「はい」
私は従った。
カチャカチャとベルトが解かれる音がし、暗闇で目は慣れていたが、Fさんの手が私の右手をつかんで股間にあてがわれた。
そこには熱い、硬いアレが触れた。
私は観念し、いつもどおりにしごき始めた。
こうやって、何人も射精させてきた。Fさんはその一人にすぎない。
「ああ、きもちいい…」
Fさんは、独り言のようにつぶやいた。
「うまいんだね。旦那さんにもそうやって?」
「ええ、少しは」
「上手だよ。ほんとうに。もう少し強く握って」
「こうですか?」
「うん、いいよ。上下に…」
暗がりなので詳しくはわからないが、やや細くて、かなり長いモノだと感じた。
亀頭の部分が感じるらしく、カリをひっかけるようにしごいてあげる。
前の職場の川田係長がそうやると気持ちがいいと教えてくれたっけ。
主人は、テコキではいったことがなかった。
妊娠が心配な時は、必ず、口で奉仕させられた。
私のテコキ経験はほとんどすべて「不貞行為」から授かった。
にちゃにちゃと淫靡な音が高くなり、Fさんはかなり興奮しているようだった。
「あ、ああ、いいよ、いいなぁ」
「硬いですね」
「規子さんは濡れてこない?」
「いや、べつに」
「髪の香りをかがせてもらっていいかな」
「はぁ、どうぞ」
Fさんは私の首筋から鼻をちかづけ、うなじを登り、おくれ毛をさぐって、くすぐったかった。
ふん、ふんと鼻息が耳元まで響く。
「キスはだめかい?」
「え?」
このシチュエーションでは仕方がない。私は唇を差し出した。
生暖かい肉が私の唇を割り、遠慮なくディープキスになった。
あむ…
タバコを吸わないFさんの口臭は、お酒の匂いが強く感じられた。
私は手を休めないで、そのキスに身をゆだねる。
なかなかねちっこい上手なキスだった。
大胆になったFさんは私の胸をセーターの上から揉みしだいた。
これくらいは仕方がないとわたしもあきらめていた。
「ああ、則子さん…もう、いきそうだ」
「すごく、膨らんでます」
「あ、ああ、いっくぅ」
どくんどくんとペニスが跳ね、甲に熱い流れを感じた。
私はポシェットからティッシュを出して、始末をした。
「あ、あふう」
「よかったですか?」
手を拭きながら、ペニスも拭いてあげる。
「ああ、よかった。自分で拭きます」
そう言うと、Fさんはティッシュを取って、ごそごそとやりだした。
もう普通のFさんに戻っていた。
私たちは公園を後にして、彼に家まで送ってもらった。

こういうことが何度かあった。
Fさんだけでなく、Yさんにも迫られた。
どうやら、Fさんから聞いたらしい。
「Fさんのことを黙っていてやるから、おれにも頼むよ」
そう言われ、Yさんの車につれこまれた。
「奥さんは、ええ匂いがする」
そういって首筋からわきの下をくんくんと嗅ぎまわるのだった。
「おれの見てくれや」
もうズボンは降ろされ、太く短いペニスがこちらを向いている。
Yさんは六十半ばを過ぎていると思うのだが、こんなに元気なのには驚かされる。
実は、主人は同い年なのに、もう立たないのだった。
「奥さん、握ってくれや」
私は手を伸ばしその熱い高まりを手のひらで包んだ。
亀頭には年季のシミがまだらに浮かび上がっている。
陰毛にも白いものが混じっていた。
それでも衰えが見えない勃起は若い子なみの硬さを有している。
ゆっくりと力強くわたしはしごいた。
Yさんの手がわたしの胸に遠慮なく伸びる。
「ああ、やわらかい。大きいんだね、胸」
「そうかしら」
「うちのなんか、しなびてだめだもん」
「そんなひどいことを言ったらいけないわ」
「こんなこと、してくれないしね」
「頼んでみたら?」
「だめだめ。立たない」
「ま、ひどい」
そんなことを言いながら、内緒の行為に耽る私たちだった。
スカートの中までいじられながら、私も気持ちが高ぶっていた。
もし、Yさんの押しがもうちょっと強かったらホテルにしけこんでいたかもしれない。
でもYさんはあえなく果ててしまった。
精液がハンドルに飛び、ぶら下がった。
ズボンにもどろりとねばい塊がこぼれている。
私は車内にあったティッシュを取ってあわてて拭いた。
「あやや、出ちまったよ。奥さん、うまいねぇ」
「そんなことないです」
「Fのもやったんだろ?あいつ早かったか?」
「おんなじくらいですよ」
「やもめだからな。早いんだ。おれも似たようなもんだけど」
そういって照れ笑いをして、私は解放された。

長い則子さんの話はこれでおしまい。
私は冷めた燗をぐいっと干した。