ゴールデンウィークの初日「憲法記念日」に、おれはとうとう、インキンタムシの痒みが最高潮に達していた。
風呂で石鹸で洗ったのが良くなかったらしい。
「牛乳石鹸」の「赤箱」で洗ったのだ。
ものの本によれば「石鹸」はアルカリ性であり白癬菌を元気づけてしまうというのだった。
早く日に干したい…しかし、おれの部屋は北向きだぁ。かゆいっ!

「早苗っ…おるかぁ?」おれは、彼女の部屋を隔てているふすまにむかって呼びかけた。
がさがさと音がして、
「なに?お兄ちゃん」
「あの、今日はええ天気やねぇ」「はぁ」「そっち行ってええか?」「なんでぇ?散らかってるし」「ちょこっと貸してほしいねん」「なにを?」「部屋を」…
押し問答が続いた。

「ええよ」
最後には早苗は根負けしてくれた。
おれは廊下に出て、障子の前に立ち、
「入るよ」
「どうぞ」
すーっと、障子を開けた。
布団を敷いたままにしていたらしく、たしかに散らかっていた。
それでもおれの部屋よりずっと整然としている。
「なんなん?お兄ちゃん」
「あのな、おまえ、かゆないか?」「え?まさか…あそこ?」「その、あそこ」
ぱっと早苗のほほに赤みが差した。
「もう、だいぶようなった」「干してるしか?」「もう、干してないって」
「そっか。あのな、おれ、干したいねん。せやさかい、どっか行っててくれへん?」
「ええーっ。ここですんの?」
「ここしか日ぃ当たるとこあれへんがな」
「そらそうかもしれんけどぉ」
明らかに困惑している早苗だった。
そのまま下に降りてくれるかと思っていたら、意外な返事が返ってきた。
「じゃ、あたしも久しぶりに干そっかなぁ」
「ああん?いっしょにか?そらあかんで。そんなとこ誰かに見つかったらどないすんね」
「見つかるかなぁ。おっちゃん朝からゴルフに行きはったし、おばちゃんもウメ地下に友達と行くいうて出ていかはったもん」
「いや、そんなことよりも、おれも、お前も丸出しでここで寝るんやで」
「そうなるわね」
「お前はええんかい」
「ほならね、この渋い衝立(ついたて)を、こうしてね隔てて、そっちお兄ちゃん、こっち、わたし」
そういって、古くから部屋にある松竹梅の絵の衝立を広げた。
こいつは何を考えているのやら…おれには、はかりかねた。
良く晴れて、窓から五月晴れの陽光が差し込んでいる。
「ほんなら、遠慮のう、当てさしてもらうわ」と、おれは畳の上に下半身をさらけ出して寝た。
衝立の向こうでも早苗が、がさごそとやっている。
あいつはほんまにやるつもりなんや…理系の女は頭の構造が、おれらとは全く違うらしい。
「おにいちゃん、やってる?」
「訊くな。やってるわい!」
衝立越しにどなる。

こうしてチンポを出していると、ふらふらと硬く立ち上がってくる。
なんせ、となりには年頃の女が、同じように「コンパス」を開いておめこをさらけ出しているのだから。
おれは妄想にかられた。
かわいい早苗が、まだ誰にも見せてない処女を指で開いている…そんなシーンをどうしても考えてしまう。
そうなると、痛いくらいに勃起してしまう。
隙間から覗かれてへんやろか?
見られてたら、おれ変態やんけ…
おれは首を曲げて、衝立の方を見るが、そんな気配はない。
静かな時間が過ぎていった。
「なあ、早苗」
「うん?」
「何考えてるんや?」
「なんも考えてへん。お兄ちゃんこそ、何考えてんのよ」
「おれ…お前のこと…考えてる」
「もしかして。あたしの裸を想像してる?」
「してる」
「やらしーっ。すきまから覗かんといてよ」
「してへん!」
「お兄ちゃん。もしかして、おちんちん立ってる?」
「なんでそんなこと、わかんねん」
「やっぱり…あたしのこと考えて立ってんねんや」
「あたりまえやろっ」
「ごめんなさい。でもね、あたしもちょっといじってる」
「いじってるって…あそこをか?」
おれは、もう、ギンギンになっていた。反り返って、先が自分の方に向いている。
「おっぱいもさわってる…」
おれは鼻血が出そうになった。
「わかった、もう、やめよ。こんなこと」
「あかんよ。ちゃんと一時間は、お日さんに当てんと。お兄ちゃん、そう言うてたやん」
「そんなこと言われても、となりで、そんなことされたら、こっちがたまらん」
「へへへ」
いたずらっ子のような笑い声が衝立の向こうでした。
おれは、はじけた。
衝立をのけ、早苗の方に膝立ちで向いた。
「お、お兄ちゃん!」
早苗の目は、おれのチンポにくぎ付けになっていた。
そして、早苗のコンパスは約60度に開かれ、薄い陰毛の下に赤い肉を飛び出させている。
なんという、卑猥な景色だ…ああ、おれの早苗…
「さ、さなえ、おれ、がまんできんくなった」
「お兄ちゃん、あかん、それはあかん」
おれは早苗にかぶさって、唇を奪った。
妄想でしか知らないキッスをあびせた。
早苗はおとなしく、口を半開きにしておれの舌先を受け入れた。
あむ…
早苗の両腕がおれの背中を抱く。
「お兄ちゃん…あたし…」
「さなえ」
勃起が自然に早苗の割れ目に沿う。
濡れていた。
早苗は、濡らしていた。
「は、はずかしい…」
「はずかしがることなんかあれへん」
「あたし、初めてやもん」
「おれかって、初めてじゃ」
早苗の髪の香を嗅いでいるうちに、感極まってきた。
「あ、あかん」
「どうしたの?」
「出てまうっ」
「なにが?わっ!」
びょびょおっと、力なく勃起の先端から、おれは漏らしてしまった。
「お兄ちゃん、ちょっと、なにこれ?」
「すまん、出てしもた。チリ紙あるけ?」
「そこの鏡台の上」
おれたちは、どちらからともなく離れた。
栗の花のような強いにおいが二人の下腹部から立ち昇る。
「ああ、お兄ちゃんの精液?これが」
「知ってんのか?」
おれは始末しながら尋ねた。
「友達とそういう本を読んで…男の子は白い精液をおちんちんから出すんやって」
「まぁ、そうや。ごめんな、こんなことしてしもて」
「あたしも、ごめんなさい」
「おれ、もう行くわ」
「うん」
おれは、ズボンを上げて、早苗の部屋を後にした。
(つづく)