疲れと高山ということで一本のビールで酔いがよく回る。
根岸さんも、レイコさんも顔を赤くして、いつになく冗舌だった。
「ほんとは、菅野君は音(ね)を上げるんじゃないかって思ってた」と根岸さん。
「いやぁ、実際、投げ出したくなりましたよ。何度も。でもどこへ逃げるんです?行くしかない」
「そうよ。山は登ると、もう降りるしかないの」レイコさんが続ける。
「あたしたちも、何度もそんな気になったわね」根岸さんが思い出すように言う。
おれたちは、行動食のナッツをつまみに、ビールを飲んでいた。
「足のマメがつぶれてね」おれは、靴下を脱いで見せた。
「あらら、ちょっと待って」
レイコさんが、自分のリュックからファーストエイドキットを出してきた。
「お風呂に入ってないからマキロンで消毒しとこうね」
手際よく、レイコさんがおれの足を手当てしてくれる。
「あんたたち、そうしてると、本当の姉弟(きょうだい)みたいね」根岸さんが言った。
おれは、なんだか恥ずかしくなった。
「けいちゃんのこと、あたしも、弟のような気になって…はい、できた」
レイコさんが「にっ」と笑って、おれを見る。
「レイコさん、兄妹は?」
「兄がひとり。でも兄さんは、鉱山技師でサンパウロに行ってる」
「へえ」

また三人で、シュラフ(寝袋)に入って明かりを落とした。
「あしたは、いよいよ帰れるね」
レイコさんがぽつりという。
「うん、町が恋しいや」正直、おれはそう思った。
「あしたね、河童橋のホテルでお風呂入ってから帰ろう」
根岸さんが提案する。
さすがに、このなりでは帰りのバスに乗るのには、はばかられた。
「うん、そうしよう」
レイコさんも賛成した。
夜の8時も過ぎると、虫の声も聞こえ、疲れと酔いも手伝って三人とも寝てしまった。

夜半に、尿意を催して、おれは起きて外のトイレに立った。
戻って来て、暗がりの中でシュラフの端を探り、二人を起こさないように体を潜り込ませた。
今晩の隣は根岸さんのはずだった。
目がさえてしまったので、根岸さんの体温を感じながら、おれはジャージを下ろし、分身を握った。
この人妻の肉体(からだ)を自由にできたら…なんてことを考えて自慰にふける。
根岸さんに密着して、その臀部を探った。なんと、彼女はショーツ一枚だったのだ。
「あれっ?上はちゃんと着ているのに、下は履いてないんだ…」
たぶん暑いからそうやって寝ているのだろう。

そっと掌(てのひら)でショーツの上から尻を撫でる。
「ううん」と、唸って根岸さんが寝返りを打って、仰向けから、向こうに向いてしまった。
おれは、羽交い絞めみたいに根岸さんに背中からくっついて、勃起を突き付けた。
尻の谷間に差すように押し付ける。
すると、根岸さんのお尻もこちらに押し付けてくる。
「起きてるのか?」わからなかったが、意識的に押し付けているとしか思えなかった。
しばらくして、根岸さんが、あろうことかショーツをすーっと下にずらしたではないか。
そして自分の股の間から手を通して、おれの勃起を握ってきた。
「硬い…」小さく声が聞こえたような気がした。
ひとしきり、根岸さんの手指でもてあそばれたあと、根岸さんはお尻をおれのほうに突き出すようにして、ぬめる部分におれの先端を数回擦りつけ、暖かい内部に導いたのである。
さすが、熟女、人妻である。その手際の良さといったら…
おれは、この展開に心臓がどきどきした。
腰を押し出し、おれも深く挿入すべく突き上げる。
「くっ」根岸さんの喉が鳴る。
抜き差しならない形で、おれたちはつながった。
ゆっくりと、潤い始めた根岸さんの胎内を、おれはペニスで往復運動を加えてやった。
「あくっ」はっきり根岸さんの声が聞こえた。
「しっ」おれは、声を立てないように注意をうながした。

根岸さんはきっと、昨夜のレイコさんとの行為を知っていて、ずっと体をうずかせていたのだろう。
ながらく旦那さんと離れて暮らしている四十の女盛りだもんな…
ものの本によれば、性欲がもっとも高まる年齢らしいではないか。
おれは、だんだん腰の送りを早くした。
「はっ、はっ、はっ…」
短い息が、根岸さんの口から洩れる。
レイコさんにバレているのではないだろうか?しかしレイコさんは微動だにしない。
側位という体位は、挿入が浅いので、ともすれば抜けるのだ。
そうならないために押し付け気味でピストンすることになる。
おれは、もう遠慮なく後ろから抱えるように根岸さんのおっぱいをもみしだいていた。
「むうん」快感にむせぶ根岸さんだった。
スポーツブラというのだろうか、バンドのようなブラジャーをしているらしく、背中にはホックはない。
つまり、腹巻のようなものだと思えばいい。
ゆえにおれは、乳首へ容易に手を到達させられた。
大きめの乳首はしっかりとしこり、つまむと、根岸さんの息が早くなる。
そして、膣がきゅうっと締まるのだ。
二人は下半身の下着を取り去り、自由に動けるようにして、ただ交わるために没頭した。
側位でも、動けばシュラフがひっぱられるので、レイコさんが気づかないわけがないのだが、彼女はまったく動かない。
もしかして息を殺して、おれたちの行為をうかがっているのかもしれなかった。
おれは、大胆になった。
知られたら知られたで、もう三人で楽しめばいいではないか…
邪魔なシュラフをめくって、おれは根岸さんを正常位で貫いた。
「あはふ…」
根岸さんと暗闇で目が合った。
おれは目で「いいだろう?」と許可を求める。
根岸さんはうなずいた。
もう、レイコさんのことも気にせずに、おれは根岸さんを犯した。
「はっ、ふっ、や、だめっつ」
「レイコさんが起きちゃうよ」聞こえよがしにおれがいう。
「やだ、やだって」
深く、えぐるようにペニスを動かす。これは留学の時にエルザに教えてもらったやり方だった。
おれは、挿入したまま落ち着いて根岸さんのワークシャツのボタンを外していき、スポーツブラも押し上げて、レイコさんより小ぶりの乳房をさらけ出した。
はむ…
おれはその乳首にかぶりついて吸った。
すると根岸さんの体が反応し、とたんに膣がおれを絞る。
レイコさんがしっかり目を開いて、おれたちの行為を見入っていた。
「ああ、起きちゃった?」しらじらしくおれは隣のレイコさんに話しかけた。
「ひどぉい。けんちゃんたら、律っちゃんが好きだったんだ」
レイコさんが、頬を膨らませて言った。
「ち、ちがうの、レイコ」慌てたのは根岸さんの方だった。
「じゃあ、律っちゃんが、誘ったの?」それには答えず、
「あとでレイコさんにもやってあげるから、今は根岸さんとさせてよ」おれは、レイコさんにそんなことを言った。
「ふふふ、いいわよ。じっくり見せてもらうから」
起き上がって杉本礼子は、ランタンを点けて、おれたちの行為を鑑賞しだした。
「レイコ…ごめん」「いいのよ。けいちゃんに可愛がってもらいなよ。旦那さんの分まで」
おれは、のけぞる根岸さんに、「旦那さんより、いいかい?」と訊いた。
「そんなこと…」
「律っちゃん、正直にいいって言いなよ」と、レイコさんが面白がっている。
そう言うレイコさんの右手はジャージのズボンの中に入っていた。
自分で慰めているらしい。
「そんなことしてないで、レイコさんも脱ぎなよ」おれが、促した。
「わかった。寄せてくれるの?」
「三人で楽しもうぜ」「うれしい」

「根岸さん、今度は、上になってよ」おれは、彼女の腕を引いて起こした。
「はずかしいわ」
そう言いながらも、つながったまま騎乗位になってくれた。
「けいちゃんの、硬い?」「硬いわぁ。そして大きいの」「旦那さんより?」「うん」
そんなことを女二人が言い合って、キスを交わしている。
どうやら、二人はレズビアンの関係でもあったらしい。
その濃厚な女の睦み合いを見ながら、下から突き上げるのは最高だった。
「根岸さん、おれ、もう」
「逝く?」
「中でもいい?」「いいよ」「できちゃうかも」「かもね」
そう言いながらも、ぜんぜん結合を解く気はないらしい。
「はやく逝っちゃいなよ。つぎがつかえてんだから」と、レイコさんが急がせる。
「じゃ」
おれは、射精に集中した。
いくぞ、いくぞ、いくぞっ!
「うりゃぁ!」
どぴゅ…
「やぁん…」そういうと、体を痙攣させて根岸さんがおれに抱き着いてきた。

「すごぉ…ほんとに中に出しちゃったんだ。律っちゃんの中から噴き出してるよ、けいちゃんのが…」
「ああ、やっちゃったよ」
「離婚しないとね。ティッシュ取って」「はい」
「あらら、こんなに出して…こわいくらいだわ」
「後悔してる?」おれが訊いた。
「してるわよ。さすがにね。菅野君が責任取ってくれるなら」
「わかりました。旦那さんに殴られに行くよ」
「ばか…」そう言って、根岸さんがおれから離れた。
股をティッシュで押さえながら。

「じゃあたしにもくれるかな?」今度はレイコさんがかぶさってきた。
「回復するまで待ってよ」おれが頼んだ。
「舐めてあげるから」レイコさんがぱくりとおれの萎えかけたペニスをほおばった。
そんなことをされたら、すぐに元気になるではないか。
「律っちゃんの匂いがする…そして、けいちゃんの匂いも」
などと一人で言いながらフェラチオを楽しんでいる。
「レイコさんは、男の人と経験がないの?」おれは、かねてからの疑問をぶつけた。
「この歳でないわけないでしょ?バカにしないでよ」
ツンとして彼女はそういった。
「だろうね。触り方とかそういうの慣れてる感じだもん」
「山と結婚しただけで、セックスは気に入った人とするの。それがあたしの考え」
フルートを演奏するようにおれのペニスの横腹に唇を這わせながら言う。
ずずず…
唾液をすする音をさせて、また大きく頬張った。
じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ…とても処女のテクニックとは思えなかった。エルザよりもうまい。
「レイコはね、若い頃、風俗に勤めてたのよ」
「言わないでって言ったのに…」「どうせバレるじゃない。そんな技を使っちゃ」
どうりで、慣れているはずだった。
風俗でお金を貯めて、山登りの遠征費にしたり、装備を買ったりし、割り切って仕事をしていたそうだ。
それでも三十代も後半になると、お客の指名も少なくなって、リストラの対象になったとか。
どこの業界も大変なんだなと、不思議に共鳴した。
「でもね、本番はやらないお店だったのよ。信じて。けいちゃん」
「信じますよ」
「もういいころね。じゃ、本番入りまぁす」
そういうと、さっさと下半身を裸にしておれをまたいできた。
「うわ」声を上げたのは根岸さんの方だった。
人のセックスを見る経験はないのだろう。
二人がレズビアンだったとしてもだ。
「ああ、かったぁい。いいわぁ」
「声が大きいわよ。隣のテントに聞こえるよ」と、根岸さんがたしなめる。
おれも、最大限に膨張している感じだった。
こんなにはっきりと限界まで膨らんだ分身を見るのは初めてだった。
レイコのフェラがそれだけすごいのだろう。
「パンパンに張ってるでしょう?」
「なんか自分のものじゃないみたいだ」
「バキュームフェラっていうの。これやるとたいていの男の人は見違えるわ」
レイコさんは上半身も脱ぎ捨て、豊満な乳房を揺らしておれの上で弾んだ。
抜き切らないまで上げ、そして一気に突き刺すような激しいピストンを自分でやっている。
「レイコ、痛くないの?」
「ううん。気持ちいいの。子宮が破られる感じがたまんないの」
アへ顔で、そう答えるのが精いっぱいという感じだった。
「ねえ、けいちゃん、後ろから突いてくんない?」
「いいですよ」
「あんたたちは、もう」根岸さんはあきれていた。
泡を吹いている陰門におれは鋼の勃起を突き立てる。
「うひぃ」
「レイコぉ」
じゅび、ずび、ぶび…
空気を噛んだ膣が鳴る。
硬いものが亀頭に当たる。
当たるたびに、レイコが叫ぶ。
「やっ、きゃっ、だめっ、いくぅ」
おれももう我慢の限界だった。
一度出しているとはいえ、この名器を前に屈してしまいそうだった。
山女の鍛え上げた膣圧は、手でやるより数倍も心地よかった。
「あは、あは、レイコ、出すよ」
「いいよ。赤ちゃんほしいっ!」
そんなことを叫ぶのだった。
怒涛の射精が始まった。
「ああ、けいちゃんの、赤ちゃん、けいちゃんの…」
そう呟きながらおれの下でぺしゃんこに潰れた。

朝まで、何度も根岸さん、レイコさんと相手を変えて交わった。
寝られず、起きたのは朝の十時を過ぎていたのだった。
慌てて、テントを片付け、リュックを背負って山小屋の売店で菓子パンと牛乳を買って歩きながら食べた。
梓川沿いを下って、河童橋に到着した。
ホテルの登山客用の風呂に飛び込んで、汗や体液でどろどろの体を洗い清めた。
根岸さんも、杉本さんも同じだろう。
そしてさっぱりと何もなかったかのように、おれたちは合流して帰りの長距離バスの切符を買って乗ったのである。
バスの中で三人ともフカのように眠ったのだった。
(おわり)