ライトノベルランキング
Web小説ランキング
小説(官能小説)ランキング

なおぼん草子

なおぼん(横山尚子)が手慰みに書いた小説です。

ギャラリーを出た後、おれたちはサーティーワンに入り、アイスを買った。
「帰る?」
「うん」
歩き疲れたのか、美香は言葉少なだった。
地下駐車場に向かって歩き出した。
ずいぶん西の方に歩いてきたので、引き返さなければならなかった。
「やっぱ、暑いなぁ」「うん」「どっかで休憩していこうか」「え?」
もちろん休憩とはラブホテルのことだ。
美香はこわばったような表情をしている。
「お兄ちゃん、やっぱりそのつもりだったの?」
「あ、いや、そういうわけじゃあ…」
おれはごまかした。
上目遣いに愛らしい顔で美香が「いいけど…」と言ったのだ。
「いいけど、ホテルはいや。お兄ちゃんのお部屋がいい」
そう言ったのだ。
「え?おれの?散らかってるぜ」
「それでも、お兄ちゃんのところがいい」
今度はきっぱりと言い切った。
「そうか、わかった」
おれとしては、どこでもよかった。
かえって、自分の部屋のほうが落ち着くというものだ。

おれたちは、車に乗り込み、しばらく無言だった。
「ほんとに、おれんちに行くよ」
彼女は首をかすかに縦に振っただけだった。
おれは車を発進させ、暗い地下駐車場から炎天下の国道に出た。
このまま南下すれば、福良インターのホテル街だが、もはやそこは目的地ではなかった。

コメント

コメントフォーム
記事の評価
  • リセット
  • リセット

↑このページのトップヘ

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村 ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村