藤原明日香の家は、禅定寺の町の旧家だった。
父親が町会議員、母親は華道師範、兄は司法修習生だった。
厳格な父をそのまま受け継いだような兄の功一は腺病質で、事あるごとに母親に意見し、妹の生活態度にまで干渉した。
そんな兄に反発するかのように、明日香は、学友と遊びまわり、恋をした。

明日香は、スーパーマーケット店員の明石直之と恋に堕ちた。
直之に誘われたあの日、坂田市の映画館で「いちご白書」を観て、涙し、「コロンビア大学」や「学生運動」、ジェームズ・クネンのことなどを語り、意気投合したことが、鮮明に明日香の脳裏に刻み込まれていた。
そして、別れ際に初めて、くちづけを交わしたことも。

まだ十七歳になったばかりの少女は、直之のアパートにあししげく通うようになる。
両親や兄には、学校のクラブ活動で忙しいなどと、嘘をついて夜が更けるまで家に帰らなかったこともあった。
ところが、明日香は、すでにブラスバンド部を辞めてしまっていた。
もともと、あまり才能がなかったことも、部活動を続けられない理由の一つだったけれど、直之と逢瀬(おうせ)を重ねる時間を作るためでもあった。

直之は出勤時間が早い分、定時も午後四時半と、早上がりになっていたため、明日香と夕方から宵の口まで一緒に過ごしていた。
明日香は、名士の娘ということもあって、ひどく人の目を気にしていたから、あまり外を出歩くことを好まなかった。
狭い直之のアパートの一室で、最初は、花札をしたり、ラジオを聞いたり、マンガを読んで過ごしていたが、すぐに、直之が少女の髪を撫で、匂いを嗅ぎ、唇を合わせると、彼の愛撫に身を委ねるようになってしまった。
「なおゆきさん・・・」
「あすか・・・」
明日香とて、男と女がするであろうことを理解していない年齢(とし)ではなかった。
明日香には、優しい直之に抱かれて、愛撫されることが、「正しい」ことのように思われた。
ただ、ただ、その優しさを失うことが、怖かったのだ。
もし自分が拒めば、直之は去っていくような気がしてならなかった。

破瓜を経験したのは、十七の梅雨の頃だった。
長雨が、アパートの裏に咲く貧相な紫陽花(あじさい)を、しとどに濡らし、明日香も濡れた。
明日香は、初めて「男」を口に入れた。
むせ返るような、男の香り。
硬い男根。
小さいころ、兄のものを見たことはあっても、それと眼前のものとはあまりにも違いすぎた。

「ああ、あすか、気持ちいいよ」
そう言われると、本当に嬉しかった。
愛する男を喜ばせることは、女にとって、至上の幸福だと知った。
そして、直之の指が明日香の秘処を探った。
もとより二人は一糸まとわぬ、あられもない姿で睦み合っていたのだった。
外の雨の音が、耳鳴りのように二人に聞こえていたことだろう。

明日香の唾液が、直之のものを滑らかに濡らした。
大つぶの真珠のような前歯が、直之の亀頭を掻く。
ふっくらとした若い口唇が、小さくつぼまっては、拡がり、肉の柱を含む。
びくびくと男根は震え、さらに、みなぎった。

「あふぅ」
ふいごのように、直之が息を大きく吐く。
じっと、彼の目が少女のつぶらな瞳を見つめている。
「あん」
直之の指が、明日香の敏感な突起を弾(はじ)いた。
さらなる刺激を求めて、処女の腰が蠢(うごめ)く。
直之も童貞だったが、どこで仕入れたのか知識だけは豊富だった。
みずみずしい、若い女体を目前に、挿入を急がない余裕はどこから来るのだろうか。
本当のところは、今すぐにも少女を貫きたい思いで一杯だった。
ただ、そうすることで明日香を逃(のが)しはしないかと、彼の理性がすんでのところで押しとどめていたのだった。
その頼みの理性も、もはや崩壊しつつあった。

口淫されている自分が、限界に近づいている。
このままでは、明日香の口を汚(けが)してしまう。
直之が、そう思った矢先、腰に電撃が走り、射精が始まってしまった。

びゅるるる・・・
ゲホッ、ゲホッ
明日香が飛び上がって、噎(む)せ、口から大量の白濁液を垂らした。
空を切って跳ねる分身が、まだ噴き上げている。
経験したことのない、大きな射精だった。

「すまん・・・あすか」
直之は小声で詫びた。
ううんと首を振って、赤い目で口をふさぎながら応える。
そして、おもむろに粗末な流しに立って、水を激しく出し、口をすすいでいる。
明日香は、口の中に出されたものが何かわからなかった。
小便ではないことはわかったが、その青臭く、苦く、粘い液体は、なにやら悪い病気のせいではないかと、訝(いぶか)しんだ。
口をきれいにし、ハンケチで拭きながら直之の前に戻ってきた明日香。
「あの、何が出たの?」
「知らないのか」
「お小水じゃないよね」
「あはは、そんなわけないだろう。精液だよ。ほんとに知らないんだね」
「せいえき?あれが」
腑に落ちた表情で、明日香は息を吐いた。
知識では知っていても、実際に経験することとの落差が大きすぎた。
男が射精することくらい中学生のころから知っていたはずだ。
ただ、どのように、何がきっかけで「それ」が起こるのかということが、明日香の頭のなかで欠落していたのだった。
直之の射精した「部分」を改めてみると、小さくしぼんでいた。
さっきの、太い、硬い、恐ろしげな「悪魔」は鳴りをひそめてしまっていた。
口の中が、まだ臭かった。

「今度は、入れていいかい?」
その意味は明日香には、わかっていた。
最初から、その予感はしていた。
「でも、あんなの入るかな。今は小さいけど」
「また、大きくなるさ。しばらくしたらね」
外の雨脚(あまあし)が一段と激しくなった。
トタンを打つ雨音が、会話を聞き取りにくくする。

直之が手で、男根をしごきだした。
柔らかそうで、伸びる肉の器官は、彼の手の中で十分に伸ばされる。
次第に、明日香の目の前で、硬さを取り戻した肉の柱。
「さあ、どうだい?」
「怖い」
「足を開いて、寝てごらん」
明日香は、言われるままに、畳の上に対角になるように寝た。
「きれいだよ、あすか」
明日香は、目をつむった。
コンパスのように足が開かれ、その間に割りこむように直之が膝立ちで入る。
明日香は足を立てるようにさせられた。
もう、はずかしい、女の部分が丸見えになっているはずだった。

くちゅ・・・
温かい、他人の体温がその部分に感じられた。
目をつむっていても、直之を感じることができる明日香だった。
初めて、男を迎え入れるのだ・・・
あの精液で、自分は孕んでしまうかもしれない。
そんな、恐怖が頭をよぎる。
「あの・・・直之さん」
「うん?」
「コンドームとか・・ないよね」
「あ、ああ。大丈夫だよ。中には出さないから」
「お願いね」
信じるしかなかった。

じゅぶ・・・
濡れているとはいえ、明日香は処女である。
痛みが走った。
「うっ」
肩に力が入る。
さらに、硬い棒状のものが押し進んでくる。
「くっ・・いたぁい」つい、声を上げる明日香。
「痛いのか?」
「うん」
涙目で明日香が言う。
まだ亀頭部分が隠れたくらいである。
このまま抜き差しならない時間が過ぎた。
直之はその間、明日香のかわいい乳房を愛撫した。
乳房を揉み、乳首を舌先で転がす。
「はぁん」
甘やかな声が、明日香の口唇から漏れる。
そして、明日香が緩んだ。
今だ・・・
直之の腰が一気に入った。
ずん・・
「ぎゃわっ!」
赤子のような声を発して、明日香がのけぞった。
直之の男が全て明日香に呑み込まれた瞬間だった。
「おおっ。たまんねぇ」
力強く締め付ける、若い女肉・・・
直之はそのきりきりと締まる圧力に抗うように、陰茎を後退させ、またゆっくり前進させる。
「いやっ、いやぁ」
大きな目を見開いて、明日香が必死の表情で直之を見つめる。
その眉間には、痛みに耐える深いしわが刻まれた。
玉の汗がお互いの額を走る。
直之の力こぶが膨らみ、明日香を抱き寄せた。
「きゃっ」
「さあ、もっと」
深く直之が明日香を挿した。
明日香には、お腹の中が持ち上がるように感じられた。
互いの陰毛が絡みあう。
それほど、強く密着していて、乳房も直之の胸板で押しつぶされている。
そして、無精髭の残る直之の口が明日香の、小さな口を食む。
むぐ・・・あむ・・・
激しい口の吸い合いと、舌の絡め合い・・・
互いの唾液を飲み合うような接吻が、二人をさらに燃え上がらせた。
処女は、積極的に男に食いついた。
勇ましい男根が、これでもかと、処女の胎内を突き上げる。
明日香は声も出ず、荒い息だけを口から吐いている。
対面座位の交接が半時間ほど続いた。
幼い乳房は男の執拗な愛撫で赤く腫れ上がってしまった。
明日香は、その後、犬のような恥ずかしい体位で後ろから貫かれ、初めてのセックスで「逝く」という経験をした。
明日香の体は四散して、バラバラに成ってしまったかのようだった。
直之はそれでも明日香に挑み、二度目の射精を明日香の背中に放った。

明日香と直之の半同棲は、それから間もなく始まった。
そして、何度も若い体を貪りあった。