カズミはそのころ、結婚して二年目の、まだまだ新婚さん気分が抜けない女だった。
私が前の会社にいた頃だから十七、八年前の話である。
知財関係の部署に配属されて、私も三年ほどが過ぎていた。
カズミは、総務部からコンバートされてきた社員だった。

知財部は、とにかく書類が多くて、その整理に人がいるのだが、上に言ってもなかなか人を回してくれない。
そうしてやっと、回してくれたのがカズミだったのだ。
もちろん特許に対してはずぶの素人である。
それまで社内報『あけぼの』の編集とか、社員の勤怠関係の仕事をしていたという。
カズミは、明るい子で、頭の回転も速かったから、私もすぐにうちとけた。
二人で、居酒屋に呑みに行くこともあった。
梅干しを入れた焼酎のお湯割りを好む、なかなか「おっさんくさい」ところにも好感が持てた。

彼女には二歳になるかならないかの男の子があった。
つまり「できちゃった婚」だったのだ。
「さすけ」という、妙な名前だったので覚えているが、どんな字を書くのかは、ついに訊かなかった。

あるお昼休みに、弁当を食べていた時だった。
カズミが、さすけちゃんのことを話していて、こんなことを言い出した。
「口のなかに、おしっこをされてさぁ」
「はぁ?」
まだ、おむつをしているのだろうか?私は、育児のことなど皆目知らないから、おしっこが飛んできて口にでも入ったのだろうと思った。
「お口いっぱいになって、どうしようかと思って、飲んじゃった」
「げ…」
周りに誰もいなかったのが幸いだった。
「あんたね、おちんちん、口に入れてたってわけ?」
「うん」
「いつもそんなことしてんの?」
「だって、かわいいんだもん」
「旦那のをくわえてやんなよ」
「やだよ。汚い」
「そんなもんかねぇ」
どうやら、さすけちゃんは、ママに舐めてもらって気持ちよくなったんだろう。
おしっこを放ったわけだ。
「ちゃんと、おっきくなるんだよ」
「やめなよ。こんなとこで」
私は、たしなめた。
二歳の男の子でもフェラされたら、大きくなるというのには、驚いたが…
「さすけちゃんに、よくないから、もうやっちゃだめだよ」
「はぁい」
舌をペロッと出してカズミはおにぎりをほおばった。
可愛い顔をして、何を考えてんだか…

それにしても、こんなバカ母に育てられた男の子はどうなっちまうんだろう?
私は、背筋が寒くなった。
その一方で、母子相姦の妖しい好奇心もかきたてられたことを思い出す。
「さすけちゃんも、もう二十歳だよなぁ」私は感慨深げに独り言を言った。

私の母子相姦の創作は、案外カズミの話がきっかけになっているのかもしれない。